生殖・不妊

① 私たちの目標

当院では、「安全で安心なお産を」を目指し、これまで妊婦さまと喜びを共にしてきました。子供を望むカップルと共に、妊娠の前から一緒に考え、学び、生殖に関わる倫理規定を遵守しながら科学的根拠に基づく治療を安全に提供します。挙児の希望を叶えてカップルの幸せに貢献し喜びを共にすることが私たちの目標です。

月経前の体の状態

月経前は女性ホルモンの一つの黄体ホルモンの分泌量が排卵後に急に増えて、その後一気に減少することにより、体をコントロールしている自律神経がバランスを崩し、頭痛や胃痛やイライラなどの不調を引き起こします。
また、黄体ホルモンは乳腺を発達させて“体温を上げる”“体内の水分を引き出す”などの作用もあるので、乳房が痛くなりだるさや下半身のむくみも起きやすくなります。
生理の1~2週間前から生理が始まるまでのこのような症状を「月経前症候群(PMS)」と呼びます。

② 不妊とは

妊娠を希望するカップルが、避妊せずに性交をしても妊娠しない状態が不妊と定義され、現在では1年がその目安とされています。その頻度は約15%と言われますが、女性の年齢により変化し、20歳後半で9%、30歳前半で15%、30歳後半で30%、40歳以上では60%以上との報告もあります。妊娠とお産をするかの選択、時期の決定は女性の自由な権利ですが、人間の生殖能力にも年齢的な限界があり、ライフスタイルの中に妊娠とお産の計画があるなら、しっかりした家族計画が必要です。

③ 妊活中、考慮中のかた

妊娠の効率は、女性の年齢により大きく変化します。32歳ぐらいまでは大きく妊娠の効率は変わりませんが、その後徐々に低下し、37歳以降は急激に低下し、42歳以降での自然妊娠は難しくなります。卵の元となる細胞は、その女性が母親の体内にいる間(胎生期)に増えることは無くなり、新しい卵子が作られません。加齢の影響で卵子の質が低下するためと言われています。現時点では、卵を若返させる治療が確立していないために、年齢相当の質の卵をいかに有効に利用し妊娠に結びつけるかが重要となります。女性の年齢が35歳未満であれば避妊解除後1年待つことも可能ですが、35歳以上であれば6ヶ月、40歳以上では速やかに専門医へのご相談をお勧めします。これまでの40歳未満であっても、子宮内膜症の既往や、卵巣の手術の既往がある方では早めの体外受精が必要になることがあります。早めの相談、卵巣機能の評価が必要になります。

  • クラミジア
  • カンジダ
  • 性器ヘルペス
  • 尖圭コンジローマ
  • 梅毒
  • おりもの
  • 淋病 等

④ 将来の妊娠を希望する方

妊娠の効率は女性の年齢に大きく影響を受けます(②、③を参照してください)。将来の妊娠を希望される方は、そのことを理解した上で、自分のライフスタイルを考慮した家族計画(早めの妊活の開始)が必要です。現在の卵巣の力(予備能)を調べ、力が年齢以上に低下して入れば、計画を前倒しすることも必要かもしれません。30歳を超えている場合は、超音波検査で卵巣や子宮の状態を観察し、卵巣の予備能を知るための採血検査(FSH;卵胞刺激ホルモン、AMH;抗ミュラー管ホルモン)を相談されてもいいと思います。将来の妊娠に備えて不要な妊娠を避ける家族計画(確実な避妊)、将来の妊娠に影響与える性行為感染症の予防(バリアの使用)、子宮内膜症、子宮筋腫など骨盤内環境に影響を与える病気がある場合には、適切な管理が必要です。不安に思ったら相談にいらして下さい。
また、児の先天性風疹症候群(妊娠初期の母体風疹感染による児の先天性異常)を防ぐために、妊娠前に風疹抗体を測定し、充分な抗体がない場合には妊活前に風疹ワクチンを打って十分な抗体を獲得することが安心です。公費でも検査、接種可能な場合がありますので市町村で確かめて下さい。

⑤ 自然の妊娠の効率を上げるのには

本来、人間には自然に妊娠し子供を授かる力が備わっています。何らかの原因で、その力が低下している状態と考えれば、低下している部分を補うことで妊娠の効率は上がります。アメリカ生殖医学会から、自然の妊娠の効率を最適化するには(optimizing natural fertility: a committee opinion)という論文が出されており、参考になります。妊娠しやすい時期は、排卵の5日前から排卵日までの6日間あり、複数回性行為できるカップルであれば2日前の性交が一番妊娠の効率が高いことが示されています。また、さらりとした透明なおりものが増えている時に性交すると効率が高いこと、性交回数は多い方が良く、毎日でも1日おきでも問題ないことが示されています。このことから、排卵日を目指して禁欲し、排卵日に性交することが望ましいわけでなく、生理が終わって透明なおりものが増えたら排卵日に向けて複数回都合の良い時に性交するだけでも自然妊娠の効率が上がります。具体的には、月経周期が28日型であれば14日目の排卵が予想されるので月経開始から9日目から14日目にかけて、基礎体温が上がるまで複数回性交を取るようにしましょう。生活のペースで週末しか性交が取れない(単身赴任、週末婚など)場合では、生理が終わった最初の週末から、週末毎に性交の機会を持てば妊娠は可能です。

⑥ 不妊の原因について

自然の妊娠が成立するには

 

卵巣に卵が育って排卵すること

排卵した卵が卵管に取り込まれること

排卵期に性交があり、膣内に射精された精液中の精子が卵管の端(卵管膨大部)まで到達すること

卵管膨大部で出会った精子と卵子が受精すること

受精した卵(受精卵)が発育しながら子宮内腔に移動し、受精後5日から7日目に良好胚(良好胚盤胞)にまで達すること

良好な子宮内膜が形成され、胚が内膜に着床すること

胚に大きな異常がなく、着床後も成長が維持されること

 

が必要です。

それらの過程が損なわれると自然妊娠が成立しません。受精障害や胚の発育障害は、体外受精により体外で卵子、精子、胚を取り扱うことで確認されます。そのために臨床的には、不妊の原因は、排卵因子・障害(卵巣内での卵の発育と排卵に関わる因子)、卵管因子(精子の卵子の出会いの場に関わる因子)、着床因子(胚の内膜への着床に関わる因子)、男性因子(精液の所見が悪い)と原因不明(はっきりとした原因が現時点の検査ではわからない)に大きく分かれます。上手く性交渉が取れない場合には、性交障害としてケアーが必要です。
また、着床しても流産に終わってしまう事が反復する時には(通常3回以上の流産、2回でも)、不育症として治療の対象となります。

⑦ 不妊の一般検査について

毎朝基礎体温をつけるのがストレスになる方もおられますが、排卵の有無や時期の判断を後からする場合や、異常妊娠の除外をするときにBBTは有用です。排卵後に基礎体温が上がることから、BBTが上がってから慌ててタイミングを取ると遅れる可能性が高いので注意が必要です。

子宮内膜の厚さと形状、卵巣の状態の観察から卵の発育の状態、排卵の時期、排卵の有無等を判断することができます。また着床に影響を与える可能性のある子宮筋腫、子宮奇形の有無、妊娠の効率を下げる可能性のある子宮内膜症などの合併症の有無を初診時に判断します。また、着床に影響する可能性のある子宮内膜ポリープも生理終了後排卵前であれば超音波検査でわかる可能性が高いです。妊娠に影響しそうな合併症があれば、状況によりM Rなどの画像検査や子宮ファイバーでの精査を考慮します。

内分泌検査

i. 卵胞期FSH,LH,E2
排卵がある方では、卵胞(卵は卵巣内に栄養する細胞に囲まれて存在し、超音波では液体を含む胞状部分として観察されます)の成長や消失を超音波で観察することで排卵をチェックすることができます。卵胞を育てるホルモン(FSH;卵胞刺激ホルモン)を月経期間中に図ることで卵巣の予備能を判断することができます。脳下垂体からのFSHで卵胞が成長すると、卵胞から卵胞ホルモン(E2;エストラジオール、通称エストロゲン)が分泌されます。E2が高まり200-300 (pg/ml)が2−3日維持されると、卵胞が成熟したと脳が判断し排卵のシグナルとなるホルモン(LH; 黄体化ホルモン)を分泌します。その後36-40時間で排卵が起こります。月経期間中(生理2−5日目)では、FSHは3mIU/mlから8mIU/mlの値をとります。卵巣の機能が低下すると、卵胞を育てるために脳はFSHの分泌を増加させるため、FSHが上昇することは卵巣の予備能の低下を意味します。FSHが10mIU/ml(厳しめでは8mIU/ml)を超えると卵巣機能の低下の恐れがあります。
 月経が不順ないし来ない方で、FSH, LHが低く、E2も低い場合には、何らかの原因(過度のダイエット等)で脳(視床下部・下垂体)が卵の成長に関しての機能が低下している可能性があります。
 また、月経が不順ないし来ない方で、FSHとE2が保たれ、LHが7mIU/mlを超えている場合には、卵巣には多くの未熟な卵胞があるのに成熟卵胞が育ちにくい多嚢胞性卵巣症候群の可能性があります。
 このように、FSH, LHとE2は、卵巣の機能を評価する、月経不順の原因を調べる、卵胞の成長と排卵時期を推測するなどの目的で測定されます。

ii. 排卵後E2,P4
排卵後、卵胞は黄体へと変化します。黄体からはE2とともに黄体ホルモン(P4;プロゲスチン、通称プロゲステロン)が分泌されます。生理後E2で再生・増殖した子宮内膜は、P4により卵(胚)が着床できるよう変化します。P4は脳の体温中枢にも働き体温を上げるために排卵後は基礎体温が上昇します。排卵から7日目の着床期前後でP4とE2を測定してホルモン的に着床環境が整っているかを調べます。P4が10pg/ml, E2が100ng/ml以上が指標となります。なお、妊娠しないと黄体が2週間で退縮してホルモンが下がるため子宮内膜が剥がれて出血して(生理となって)次の周期が始まります。妊娠した場合には、胎盤の元となる細胞からHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が分泌され黄体機能が保たれて生理は発来せず、高温が続きます。

iii. 甲状腺ホルモン
甲状腺の機能が悪いと、月経不順や流産の原因になります。また、甲状腺ホルモンが妊娠中に不足すると胎児の知能発育・運動発育に影響することが分かっていることから、妊娠前に甲状腺ホルモンの評価を行います。脳から甲状腺に向けて分泌される刺激ホルモン(TSH)と活性型甲状腺ホルモン(fT4)をスクリーニングで検査します。異常が疑われる場合には、内科と共同で管理します。

iv. プロラクチン
プロラクチン(PRL)は、授乳と関係するホルモンで高くい(高プロラクチン血症)場合には、月経不順や乳汁分泌を認める時は薬で下げる治療対象となります。高値では、下垂体腫瘍の可能性があるため脳神経外科・耳鼻咽喉科へ相談を行います。また、月経不順がない場合には、プロラクチンが高くても活性を持たないプロラクチン血症(多量体、高分子プロラクチン)の可能性を考え必ずしも薬で下げる必要はありません。

クラミジアは、性行為感染症の一つですが、多くは無症状で経過するために知らない間にかかっている場合があります。卵管に慢性の炎症を引き起こすと周囲に膜状の癒着が起こり、卵管を狭くしたり、閉塞させたりするために卵管因子として不妊の原因となります。子宮の頚部を擦過してクラミジアを同定する検査ないし採血でクラミジア抗体(IgA,IgG)を調べる検査で感染の有無を評価します。
既往の方は、擦過での検査がお勧めなので、治療経験のある方は自己申告されるのが望ましいと思います。抗生物質による治療が有効で、カップルでの治療を基本とします。炎症が治癒しても、炎症に起因する癒着等の卵管の変化は抗生物質では治らないので後述の卵管通過性検査での卵管の評価が大切になります。卵管機能が障害されていても、体外受精で児を得ることができます。腹腔鏡を用いた手術で卵管の周囲の癒着を剥がし、卵管の水腫も改善することも可能ですが、治療効果が不安定のため体外受精をお勧めすることが多くなりました。なお、卵管水腫を認める場合には、体外受精で胚移植を行っても着床率が低下することが知られていることから予め卵管水腫の腹腔鏡手術(卵管結紮、切断、切除)をすることがあります。

子宮内に細いカテーテルを挿入し、バルーン(風船)を膨らませて固定後、気体(通気)や液体(通水ないし子宮卵管造影)を用いて通過性を確認する検査で、生理終了後排卵2−3日前までに行います。

造影剤を用いる子宮卵管造影は、レントゲンの被曝と造影剤のアレルギー、ショック、甲状腺への影響、喘息の誘発などのリスクはありますが、画像評価ができるため周囲の癒着の有無も推測できるためより正確な検査になります。当院では、リスクの軽減を優先して簡易な通水検査で評価しています。
 通水時の逆流の有無、抵抗、痛みの有無だけでなく、経膣超音波で観察しながら評価することで、通過性だけでなく、子宮内膜ポリープ、子宮内癒着の有無、水腫の有無、骨盤内への液体の貯留を評価できます。注意しながら行えば、通過性に問題なければほとんどの方が痛みを感じないか軽度の痛みで検査ができます。

不妊カップルの約半分に男性側の因子が関わっていると言われるため、精液の状態を知ることは大切です。
当院では精液検査は予約の検査ですが、精液は検査できる状態になる(液化する)のに約30分かかるため、専用の容器に自宅にてマスターベッションで採取して頂き持参して検査をします。精液検査の前の禁欲期間は2-7日が望ましいと言われています(WHO推奨)。禁欲期間が長いと精子の運動率が低下する可能性があるので1週間を超える禁欲はお勧めしません。

精液量:1.5ml以上
濃度:1500万/ml以上
総運動精子数:3900万/射精以上
総運動率:40%以上
前進運動率(%):32%以上
正常精子形態率(%):4%以上
白血球数(万/ml):100万 /ml未満

精液検査は複数回行うことが推奨されています。 初回上記基準未満、あるいは基準下限の場合には翌月以降の再検査で判断します。精子を認めない(無精子症)、精子が動いていない(精子不動症)では近郊の専門施設をご紹介します。当院で体外受精・顕微受精の準備が整うまでの間は、体外受精の適応がある場合には他の専門施設へご紹介します。

膣内に射精された精子は、子宮の頚管を通って子宮内腔、卵管に至ります。排卵期には頚管に透明でさらりとした粘液が増加します。性交後に粘液内に精子が泳ぎ上がり動いているかを調べる検査が性交後検査です。排卵期を予想して来院前日か当日朝に性行為を行って来院して頂き、頚管内の粘液を一部採取して顕微鏡で精子の数と運動性を調べます。クロミフェンによる卵巣刺激周期では、頚管粘液が減少する可能性があり、性交後検査に影響します。定量化の難しい検査ですが、良好運動精子が確認されると安心です。精子は存在するものの動きが悪い場合には、精子不動化抗体等の免疫因子の関与の可能性もありますので、早めの抗精子抗体の測定(自費)を、早めの子宮内に精子を排卵期に注入する人工授精(IUI,AIH)へのステップアップを考慮します。

A) 基礎体温(BBT)測定

毎朝基礎体温をつけるのがストレスになる方もおられますが、排卵の有無や時期の判断を後からする場合や、異常妊娠の除外をするときにBBTは有用です。排卵後に基礎体温が上がることから、BBTが上がってから慌ててタイミングを取ると遅れる可能性が高いので注意が必要です。

B) 超音波検査

子宮内膜の厚さと形状、卵巣の状態の観察から卵の発育の状態、排卵の時期、排卵の有無等を判断することができます。また着床に影響を与える可能性のある子宮筋腫、子宮奇形の有無、妊娠の効率を下げる可能性のある子宮内膜症などの合併症の有無を初診時に判断します。また、着床に影響する可能性のある子宮内膜ポリープも生理終了後排卵前であれば超音波検査でわかる可能性が高いです。妊娠に影響しそうな合併症があれば、状況によりM Rなどの画像検査や子宮ファイバーでの精査を考慮します。

C) 内分泌検査

i. 卵胞期FSH,LH,E2
排卵がある方では、卵胞(卵は卵巣内に栄養する細胞に囲まれて存在し、超音波では液体を含む胞状部分として観察されます)の成長や消失を超音波で観察することで排卵をチェックすることができます。卵胞を育てるホルモン(FSH;卵胞刺激ホルモン)を月経期間中に図ることで卵巣の予備能を判断することができます。脳下垂体からのFSHで卵胞が成長すると、卵胞から卵胞ホルモン(E2;エストラジオール、通称エストロゲン)が分泌されます。E2が高まり200-300 (pg/ml)が2−3日維持されると、卵胞が成熟したと脳が判断し排卵のシグナルとなるホルモン(LH; 黄体化ホルモン)を分泌します。その後36-40時間で排卵が起こります。月経期間中(生理2−5日目)では、FSHは3mIU/mlから8mIU/mlの値をとります。卵巣の機能が低下すると、卵胞を育てるために脳はFSHの分泌を増加させるため、FSHが上昇することは卵巣の予備能の低下を意味します。FSHが10mIU/ml(厳しめでは8mIU/ml)を超えると卵巣機能の低下の恐れがあります。
 月経が不順ないし来ない方で、FSH, LHが低く、E2も低い場合には、何らかの原因(過度のダイエット等)で脳(視床下部・下垂体)が卵の成長に関しての機能が低下している可能性があります。
 また、月経が不順ないし来ない方で、FSHとE2が保たれ、LHが7mIU/mlを超えている場合には、卵巣には多くの未熟な卵胞があるのに成熟卵胞が育ちにくい多嚢胞性卵巣症候群の可能性があります。
 このように、FSH, LHとE2は、卵巣の機能を評価する、月経不順の原因を調べる、卵胞の成長と排卵時期を推測するなどの目的で測定されます。

ii. 排卵後E2,P4
排卵後、卵胞は黄体へと変化します。黄体からはE2とともに黄体ホルモン(P4;プロゲスチン、通称プロゲステロン)が分泌されます。生理後E2で再生・増殖した子宮内膜は、P4により卵(胚)が着床できるよう変化します。P4は脳の体温中枢にも働き体温を上げるために排卵後は基礎体温が上昇します。排卵から7日目の着床期前後でP4とE2を測定してホルモン的に着床環境が整っているかを調べます。P4が10pg/ml, E2が100ng/ml以上が指標となります。なお、妊娠しないと黄体が2週間で退縮してホルモンが下がるため子宮内膜が剥がれて出血して(生理となって)次の周期が始まります。妊娠した場合には、胎盤の元となる細胞からHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が分泌され黄体機能が保たれて生理は発来せず、高温が続きます。

iii. 甲状腺ホルモン
甲状腺の機能が悪いと、月経不順や流産の原因になります。また、甲状腺ホルモンが妊娠中に不足すると胎児の知能発育・運動発育に影響することが分かっていることから、妊娠前に甲状腺ホルモンの評価を行います。脳から甲状腺に向けて分泌される刺激ホルモン(TSH)と活性型甲状腺ホルモン(fT4)をスクリーニングで検査します。異常が疑われる場合には、内科と共同で管理します。

iv. プロラクチン
プロラクチン(PRL)は、授乳と関係するホルモンで高くい(高プロラクチン血症)場合には、月経不順や乳汁分泌を認める時は薬で下げる治療対象となります。高値では、下垂体腫瘍の可能性があるため脳神経外科・耳鼻咽喉科へ相談を行います。また、月経不順がない場合には、プロラクチンが高くても活性を持たないプロラクチン血症(多量体、高分子プロラクチン)の可能性を考え必ずしも薬で下げる必要はありません。

D) クラミジア感染症

クラミジアは、性行為感染症の一つですが、多くは無症状で経過するために知らない間にかかっている場合があります。卵管に慢性の炎症を引き起こすと周囲に膜状の癒着が起こり、卵管を狭くしたり、閉塞させたりするために卵管因子として不妊の原因となります。子宮の頚部を擦過してクラミジアを同定する検査ないし採血でクラミジア抗体(IgA,IgG)を調べる検査で感染の有無を評価します。
既往の方は、擦過での検査がお勧めなので、治療経験のある方は自己申告されるのが望ましいと思います。抗生物質による治療が有効で、カップルでの治療を基本とします。炎症が治癒しても、炎症に起因する癒着等の卵管の変化は抗生物質では治らないので後述の卵管通過性検査での卵管の評価が大切になります。卵管機能が障害されていても、体外受精で児を得ることができます。腹腔鏡を用いた手術で卵管の周囲の癒着を剥がし、卵管の水腫も改善することも可能ですが、治療効果が不安定のため体外受精をお勧めすることが多くなりました。なお、卵管水腫を認める場合には、体外受精で胚移植を行っても着床率が低下することが知られていることから予め卵管水腫の腹腔鏡手術(卵管結紮、切断、切除)をすることがあります。

E) 卵管通過性検査

子宮内に細いカテーテルを挿入し、バルーン(風船)を膨らませて固定後、気体(通気)や液体(通水ないし子宮卵管造影)を用いて通過性を確認する検査で、生理終了後排卵2−3日前までに行います。

造影剤を用いる子宮卵管造影は、レントゲンの被曝と造影剤のアレルギー、ショック、甲状腺への影響、喘息の誘発などのリスクはありますが、画像評価ができるため周囲の癒着の有無も推測できるためより正確な検査になります。当院では、リスクの軽減を優先して簡易な通水検査で評価しています。
 通水時の逆流の有無、抵抗、痛みの有無だけでなく、経膣超音波で観察しながら評価することで、通過性だけでなく、子宮内膜ポリープ、子宮内癒着の有無、水腫の有無、骨盤内への液体の貯留を評価できます。注意しながら行えば、通過性に問題なければほとんどの方が痛みを感じないか軽度の痛みで検査ができます。

F) 精液検査

不妊カップルの約半分に男性側の因子が関わっていると言われるため、精液の状態を知ることは大切です。
当院では精液検査は予約の検査ですが、精液は検査できる状態になる(液化する)のに約30分かかるため、専用の容器に自宅にてマスターベッションで採取して頂き持参して検査をします。精液検査の前の禁欲期間は2-7日が望ましいと言われています(WHO推奨)。禁欲期間が長いと精子の運動率が低下する可能性があるので1週間を超える禁欲はお勧めしません。

精液量:1.5ml以上
濃度:1500万/ml以上
総運動精子数:3900万/射精以上
総運動率:40%以上
前進運動率(%):32%以上
正常精子形態率(%):4%以上
白血球数(万/ml):100万 /ml未満

精液検査は複数回行うことが推奨されています。 初回上記基準未満、あるいは基準下限の場合には翌月以降の再検査で判断します。精子を認めない(無精子症)、精子が動いていない(精子不動症)では近郊の専門施設をご紹介します。当院で体外受精・顕微受精の準備が整うまでの間は、体外受精の適応がある場合には他の専門施設へご紹介します。

G) 頚管因子の検査

膣内に射精された精子は、子宮の頚管を通って子宮内腔、卵管に至ります。排卵期には頚管に透明でさらりとした粘液が増加します。性交後に粘液内に精子が泳ぎ上がり動いているかを調べる検査が性交後検査です。排卵期を予想して来院前日か当日朝に性行為を行って来院して頂き、頚管内の粘液を一部採取して顕微鏡で精子の数と運動性を調べます。クロミフェンによる卵巣刺激周期では、頚管粘液が減少する可能性があり、性交後検査に影響します。定量化の難しい検査ですが、良好運動精子が確認されると安心です。精子は存在するものの動きが悪い場合には、精子不動化抗体等の免疫因子の関与の可能性もありますので、早めの抗精子抗体の測定(自費)を、早めの子宮内に精子を排卵期に注入する人工授精(IUI,AIH)へのステップアップを考慮します。

⑧ 不妊治療について

初診後、通常であれば1−2周期の間に、系統的な一般の不妊検査を行います。スクリーニング検査で大きな異常がなく自然に近い妊娠が可能な方ではタイミング指導から行います。年齢と治療法により1周期あたりの妊娠率は変化しますが、数学的にも一つの治療法で妊娠する方の約8割は6周期までに結果が出ることから、卵巣機能が問題なければ6周期ごとに次の治療にステップアップします。卵巣機能が低下している場合や、年齢が40歳近くなっていれば3−4周期でステップアップするか初めからより効率の高い治療を選択するのが望ましいと考えます。

28日から35日型で規則正しい排卵が後予想される場合には、卵巣刺激をする必要は原則的にありません。排卵予想の5日前から排卵日まで複数回性交することを目標にします。28日型であれば、月経開始の10日目ぐらいから性交を開始しながら、月経10日目から12日目ぐらいで超音波による卵胞観察を行い、排卵日を推定してタイミング指導の補正を行い、排卵後2−3日を目安に再来して超音波による排卵確認を行うように計画を立てます。黄体期(高温相)が10日未満や排卵後約7日目のプロゲステロン濃度が10pg/ml未満の場合には黄体機能不全として排卵後黄体ホルモンの経口剤を使用することもありますが、最近の論文では自然排卵周期での黄体ホルモン補充は有効性が認められないとされており(ASRM a committee opinion 2021)、当院では原則補充しません。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、クロミフェンによる卵巣刺激を用います。クロミフェンを月経開始5日目から1錠3日間、1錠5日間、2錠5日間を卵巣の反応を見ながら使い分けます。卵巣刺激周期でも、多胎妊娠を予防するために、単一排卵を目指します。性交を開始する以前から超音波による卵胞計測を行い、複数の卵胞の成長(2個で相談、3個以上では必ず)を認めた場合には、排卵の抑制、避妊指導を行います。耐糖能異常、男性ホルモン増加を認める場合には、血糖を下げる薬(メトフォルミン)や副腎皮質ステロイドの併用を考慮します。
クロミフェン無効例では、FSH製剤(リコンビナントFSH)の少量漸増自己注射で卵巣発育を図ります。
どうしても単一排卵が難しい場合には、体外受精に進み、単一胚移植をお勧めします。
卵巣刺激周期では、自然排卵を待つことも可能ですが、HCGの注射ないしは脳からのLH分泌を起こすGnRHアゴニスト(ブセレリン、ナファレリン)を使用して排卵を調整します。
多嚢胞性卵巣症候群以外の排卵障害でもクロミフェンを使うことがありますが、管理は同様になります。クロミフェン無効で、LHが低値の場合には、FSH製剤でなく、LHを含有するHMG製剤を使用することがあります。

排卵期にパートナーの精液を、子宮内に注入して妊娠を目指す治療が人工授精(IUI)で、通常は夫の精液を用いるためAIHと呼ばれます。
精液所見が悪い(精子数が少ない、運動率が低い)、精子の子宮内への泳ぎ上がりが悪い(性交後検査;フーナーテストの結果が悪い)、性行為が上手くできない(性行障害がある)、性行為による妊娠を望まない、タイミング指導だけでは妊娠しない場合に必要になります。
排卵前から排卵直後に行う予約の治療です。実施前に受診して卵胞のモニターをして排卵時期を推定します。通常は、排卵推定キットを併用して、朝陽性になったら電話で当日ないし翌日の人工授精の予約をして頂きます。モニターで来院時に、卵胞の大きさと生理周期を考慮して予約をする場合や、排卵を促すGnRHアナログの噴霧やHCGの注射で計画的に行ないます。
当院では、液化して精液を人工授精専用の精液処理キット(撹拌密度勾配法)を用いてなるべく良好な運動精子を取り出し、精子処理専用の培養液で洗浄した後に注入に使用します。約1時間程度お預かりしてから注入までにかかります。
経膣超音波検査装置で排卵の有無だけでなく子宮内腔の方向を確認し、柔らかく細い人工授精用の注入カテーテルを使用しますので原則痛みはありません。
念のため3分程内診台でお休み頂きますが、少量の精子懸濁液を注入するので逆流なく、長時間の安静は必要ありません。精液そのものが必ずしも無菌的でなく、経膣的な操作になるため、人工授精後感染を起こして下腹痛や発熱が生じる可能性があります。予防的に抗生物質を2日間内服していただきます。人工授精後の性交渉は自由です。
人工授精の1回あたりの妊娠の効率は、最大10%位と報告されています。人工授精で妊娠する場合のほとんどが6回までに妊娠をされますが、一番妊娠しやすい若い女性で3人に1人、40歳以上では10人に1人ぐらいと妊娠率は年齢により変化します。若い女性でも6回まで、40歳を超えたら3−4回までで結果が出なければ、より妊娠効率の高い体外受精へステップアップが必要です。なお、注入後の過程は性行為による妊娠(自然妊娠)と変わらないので、妊娠した後の流産率、出生児の先天異常の頻度は自然妊娠と同様で女性の年齢で決まります。
現時点では、人工授精は保険適応が認められていないために自費での治療になります。卵巣刺激周期で3個以上の卵胞の成長を認めた場合には当院では人工授精もせず避妊の指導をしています。精液所見が極めて不良の場合には、ご本人との相談になります。現精液中の総運動精子が100万を下回るとほとんど妊娠しません。100万未満では、精液の処理を進める前に相談をして中止をお勧めしています。
同意書ともに、カップルのいずれかが持参された精液を夫婦の男性の精子とみなして処理・使用します。取り違えが起こらない体制で精液を扱います。

体外受精・胚移植(IVF-ET)、顕微受精(ICSI)、胚凍結・融解胚移植とそれに付随する医療が生殖補助医療;ARTです。2017年の日本産婦人科学会の調査では、生殖補助医療を用いて出生した児は56,617人で出生児の16人に1名にあたり、決して特殊な医療ではありません。当院では、ART施設を準備中のため、施設が整うまでは生殖補助医療の対象となるカップルは近隣施設へご紹介します。

初診後、通常であれば1−2周期の間に、系統的な一般の不妊検査を行います。スクリーニング検査で大きな異常がなく自然に近い妊娠が可能な方ではタイミング指導から行います。年齢と治療法により1周期あたりの妊娠率は変化しますが、数学的にも一つの治療法で妊娠する方の約8割は6周期までに結果が出ることから、卵巣機能が問題なければ6周期ごとに次の治療にステップアップします。卵巣機能が低下している場合や、年齢が40歳近くなっていれば3−4周期でステップアップするか初めからより効率の高い治療を選択するのが望ましいと考えます。

A) 自然周期のタイミング指導

28日から35日型で規則正しい排卵が後予想される場合には、卵巣刺激をする必要は原則的にありません。排卵予想の5日前から排卵日まで複数回性交することを目標にします。28日型であれば、月経開始の10日目ぐらいから性交を開始しながら、月経10日目から12日目ぐらいで超音波による卵胞観察を行い、排卵日を推定してタイミング指導の補正を行い、排卵後2−3日を目安に再来して超音波による排卵確認を行うように計画を立てます。黄体期(高温相)が10日未満や排卵後約7日目のプロゲステロン濃度が10pg/ml未満の場合には黄体機能不全として排卵後黄体ホルモンの経口剤を使用することもありますが、最近の論文では自然排卵周期での黄体ホルモン補充は有効性が認められないとされており(ASRM a committee opinion 2021)、当院では原則補充しません。

B) 卵巣刺激周期のタイミング指導

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、クロミフェンによる卵巣刺激を用います。クロミフェンを月経開始5日目から1錠3日間、1錠5日間、2錠5日間を卵巣の反応を見ながら使い分けます。卵巣刺激周期でも、多胎妊娠を予防するために、単一排卵を目指します。性交を開始する以前から超音波による卵胞計測を行い、複数の卵胞の成長(2個で相談、3個以上では必ず)を認めた場合には、排卵の抑制、避妊指導を行います。耐糖能異常、男性ホルモン増加を認める場合には、血糖を下げる薬(メトフォルミン)や副腎皮質ステロイドの併用を考慮します。
クロミフェン無効例では、FSH製剤(リコンビナントFSH)の少量漸増自己注射で卵巣発育を図ります。
どうしても単一排卵が難しい場合には、体外受精に進み、単一胚移植をお勧めします。
卵巣刺激周期では、自然排卵を待つことも可能ですが、HCGの注射ないしは脳からのLH分泌を起こすGnRHアゴニスト(ブセレリン、ナファレリン)を使用して排卵を調整します。
多嚢胞性卵巣症候群以外の排卵障害でもクロミフェンを使うことがありますが、管理は同様になります。クロミフェン無効で、LHが低値の場合には、FSH製剤でなく、LHを含有するHMG製剤を使用することがあります。

C) 人工授精(IUI,AIH)

排卵期にパートナーの精液を、子宮内に注入して妊娠を目指す治療が人工授精(IUI)で、通常は夫の精液を用いるためAIHと呼ばれます。
精液所見が悪い(精子数が少ない、運動率が低い)、精子の子宮内への泳ぎ上がりが悪い(性交後検査;フーナーテストの結果が悪い)、性行為が上手くできない(性行障害がある)、性行為による妊娠を望まない、タイミング指導だけでは妊娠しない場合に必要になります。
排卵前から排卵直後に行う予約の治療です。実施前に受診して卵胞のモニターをして排卵時期を推定します。通常は、排卵推定キットを併用して、朝陽性になったら電話で当日ないし翌日の人工授精の予約をして頂きます。モニターで来院時に、卵胞の大きさと生理周期を考慮して予約をする場合や、排卵を促すGnRHアナログの噴霧やHCGの注射で計画的に行ないます。
当院では、液化して精液を人工授精専用の精液処理キット(撹拌密度勾配法)を用いてなるべく良好な運動精子を取り出し、精子処理専用の培養液で洗浄した後に注入に使用します。約1時間程度お預かりしてから注入までにかかります。
経膣超音波検査装置で排卵の有無だけでなく子宮内腔の方向を確認し、柔らかく細い人工授精用の注入カテーテルを使用しますので原則痛みはありません。
念のため3分程内診台でお休み頂きますが、少量の精子懸濁液を注入するので逆流なく、長時間の安静は必要ありません。精液そのものが必ずしも無菌的でなく、経膣的な操作になるため、人工授精後感染を起こして下腹痛や発熱が生じる可能性があります。予防的に抗生物質を2日間内服していただきます。人工授精後の性交渉は自由です。
人工授精の1回あたりの妊娠の効率は、最大10%位と報告されています。人工授精で妊娠する場合のほとんどが6回までに妊娠をされますが、一番妊娠しやすい若い女性で3人に1人、40歳以上では10人に1人ぐらいと妊娠率は年齢により変化します。若い女性でも6回まで、40歳を超えたら3−4回までで結果が出なければ、より妊娠効率の高い体外受精へステップアップが必要です。なお、注入後の過程は性行為による妊娠(自然妊娠)と変わらないので、妊娠した後の流産率、出生児の先天異常の頻度は自然妊娠と同様で女性の年齢で決まります。
現時点では、人工授精は保険適応が認められていないために自費での治療になります。卵巣刺激周期で3個以上の卵胞の成長を認めた場合には当院では人工授精もせず避妊の指導をしています。精液所見が極めて不良の場合には、ご本人との相談になります。現精液中の総運動精子が100万を下回るとほとんど妊娠しません。100万未満では、精液の処理を進める前に相談をして中止をお勧めしています。
同意書ともに、カップルのいずれかが持参された精液を夫婦の男性の精子とみなして処理・使用します。取り違えが起こらない体制で精液を扱います。

D) 生殖補助医療

体外受精・胚移植(IVF-ET)、顕微受精(ICSI)、胚凍結・融解胚移植とそれに付随する医療が生殖補助医療;ARTです。2017年の日本産婦人科学会の調査では、生殖補助医療を用いて出生した児は56,617人で出生児の16人に1名にあたり、決して特殊な医療ではありません。当院では、ART施設を準備中のため、施設が整うまでは生殖補助医療の対象となるカップルは近隣施設へご紹介します。

⑨ 妊娠しやすい身体づくりについて

タバコ、痩せ(BMI<18.5)や肥満(BMI>25)、アルコールの過剰摂取(40gアルコール/日、5度ビール、缶酎ハイで500ml;中瓶1本ないしロング缶1本、15度ワインで180ml;1/4本、15度日本酒;180ml;1合),カフェインの過剰摂取(>250mg/日;妊娠中は200mg/日未満が望ましく、コーヒーでマグカップ2杯程度、紅茶、ココア、コーラはそれぞれその倍量、お茶はその3倍量に相当)は妊娠の効率を下げます。安全な妊娠には、葉酸(1日400-800μg)、ビタミンB6、B12などの摂取が望ましいとされます。食事では、肉より魚食、ナッツ類、豆類、乳酸菌などが妊娠の効率を上げる可能性があります。バランスの良い食事、サプリメントの活用、適正体重の維持、適度な運動、趣味等でのストレスの発散は妊娠の効率を上げる可能性あります。
BMIは、(体重kg)/(身長)2で求め、痩せと肥満は妊娠のしやすさだけでなく、妊娠後の産科合併症に関わります。日本産科婦人科学会では、BMI>25の場合には、妊娠前に減量して安全に妊娠することを推奨しています。

 妊娠の可能性を高める十箇条として以下を参照下さい・
(The Fertility Diet, J.E.Chavarro and W.C.Willett)

 

1加工品やファーストフードに含まれている動脈硬化をすすめると言われるトランス脂肪酸を避けて血管の老化を防ぐ

2料理には、オリーブオイルやキャノーラオイルなどの不飽和脂肪酸を使う

3過剰な動物性タンパク質は避け、豆類などの植物性タンンパクを摂取する

4すぐに血糖値やインシュリンを上げる炭水化物は避けてその作用が弱い全粉穀物や他の炭水化物を食べる

5毎日一杯の無調整牛乳や少量のアイスクリーム、無調整のヨーグルトを食べる

6葉酸と他のビタミンB群を含むマルチビタミンを取る

7鉄分は果物、野菜、豆類、サプリメントからたくさん取るが、赤肉(羊肉や成牛の肉)は避ける

8水がベストだが適度のコーヒーと紅茶,お酒は構わない。糖分の入った炭酸飲料は飲まない

9健康的な体重を目指す

10活動的でないヒトは日々のエクササイズを行い、既にエクササイズをしているヒトはそのペースを上げるが、やりすぎるのは避ける

 

⑩ 精子の質を上げるには

精子も卵子と同様に加齢の影響を受けますが、年齢が高くなっても精子の元の細胞から新しい成熟精子が平均約64日間で毎日作られています。精巣内で精子がつくられていれば、生児を得ることが可能ですし、新しい精子が作られる時間は短いことから、日常生活を変えることで精子の状態が良くなる可能性があります。

i. 禁煙

タバコには、精子と卵子の質を低下させる有害物質が多く含まれるため、女性だけでなく男性でも喫煙は妊娠の効率を低下させます。電子タバコも同様です。子供を考えたら禁煙しましょう。

ii. 禁欲しすぎない

頻繁に射精しても、精子が薄まって妊娠率が下がることはないことがわかっています。自然妊娠を目指すなら毎日の性交でも大丈夫です。かえって溜まりすぎの精液では妊娠の効率が下がってしまいます。

iii. 股間を温めすぎない

精巣の温度は、体温より低く調整されています。温度が上がると精子を作る機能(造精能)が低下することがわかっています。下着は、体温がこもらないトランクス、長風呂や高温のサウナ、パソコン等発熱する機器を膝上に置いて作業することは控えめに。

iv. 育毛剤

プロペシアⓇなど育毛剤の一部は精液所見を悪化させる可能性があります。処方医と相談を。

v. バランスの良い食事と適正体重の維持

男性も女性同様肥満は妊娠の効率を下げます。食生活に注意してカロリー過多、炭水化物過多を避けましょう。また過度の飲酒は精液所見を悪くします。

vi. 精神的ストレスを溜めすぎない

精神的ストレスが精液所見や性行為に影響することがわかっています。子供が出来づらい事は大きなストレスですが、排卵日に合わせて性交を取ることもストレスに感じるかも知れません。排卵5日前から排卵日までが妊娠可能で、2日前が一番効率的とのデータもあるので排卵日にこだわる必要はありません。趣味や運動等でストレスを発散しながら二人で協力して妊娠を目指しましょう。長時間の自転車は、精液所見を悪化させることもあるので注意しましょう。

⑪ 上手く性交ができないカップルへ

子供が欲しくても、上手く性行為ができないカップルや性行為をしたくないカップルも少なくありません。原因はさまざまですが、お二人の気持ちにより妊娠するための方針は変わります。性行為による妊娠を希望する場合には

●もともとうまく性行為ができない場合
性交痛が原因の場合は、女性側に原因があればその改善が必要です。一方、不適切はマスターベーションにより膣内で射精が難しい男性が増えています。専門医にご紹介します。

●途中から、膣内射精まで至らない場合
不妊期間が長くなると、また排卵日だけに性交するタイミング法を続けていると、性交回数が減って効率が下がるだけでなく、性行為が上手くいかなくなることがあります。心臓病などの合併症がなければ、勃起不全改善薬(バイアグラ®、シアリス®、レビトラ®)で補助することも可能です。早く解決したければ、妊娠と性交を分けて考えて、並行して早く人工授精にステップアップすることも可能です。

⑫ 性行為を避けたいカップルへ

マスターベーションで射精が可能で、採取した精液中に精子が確認されれば、その精子を利用して人工授精(IUI)・体外受精(A R T)で子供を得ることが可能です。射精が困難な場合や精液の所見が悪い場合には、専門医療機関(獨協医科大学埼玉医療センター等)をご紹介します。

⑬ 不育症検査について

妊娠が成立するが、流産や死産を繰り返して生児が得られない状態を不育症と定義されています。臨床的妊娠(胎嚢の確認)を対象に、最近は2回流産を繰り返すと不育症として扱うことが多くなりました(以前は2回の流産は反復流産、3回以上を習慣流産と定義していました)。2回以上の流産を経験する女性は5%、3回以上の流産を経験する女性は1%と言われています。不育症の4大原因は、抗リン脂質抗体症候群、子宮奇形、夫婦の染色体構造異常、胎児染色体異常と言われます。当院でも診断のための検査の一部はできますが、異常によっては、遺伝カウンセリング、子宮奇形に対する手術、体外受精時の着床前診断は実施施設の認定を受けた専門施設へのご紹介になります。

成田レディースクリニック TEL:048-769-5511成田レディースクリニック TEL:048-769-5511