妊娠糖尿病について

妊娠糖尿病と云われ悩んでいる方に!

はじめに

「妊娠糖尿病(GDM)は糖尿病ではない。」そう思うように至ったのは、
「成書は必ずしも正しくはない」と感じて、私なりに20年前の1995年から成書の常識を疑い、相対化して観察し、仮説、検証した成果と、最近の糖尿病の話題から知りえたことを一考察として述べてみます。

糖尿病は成因の面から大きく二つのタイプ(Ⅰ型とⅡ型)に分けられます。

Ⅰ型糖尿病は極めて少数で、大部分は生活習慣病、肥満、老化を原因とするⅡ型糖尿病です。
二十歳以上~四十歳以下のⅡ型糖尿病患者は二十歳時からすでに肥満状態であり、その後さらに肥満が進行し高度の肥満状態になることが判明しています(2011年度国民健康・栄養調査報告)。

しかし、糖尿病患者の糖代謝以上は軽度であれば殆ど症状を現さないため、糖尿病の存在を自覚せず、長期間放置されることが多いのです。

そこで1979年、糖尿病の診断基準を簡略化して糖尿病の潜在症例を早期に検出する方法の確立が必要とのことで、ADA(アメリカン糖尿病学会)の新しい診断基準が確立されました。
糖尿病の診断には慢性高血糖の確認が不可欠です。

妊娠糖尿病(GDM)の概念の矛盾に気付き検証したこと

1妊娠前から糖尿病(妊婦初期高血糖)があった場合には、胎児に奇形を生じる可能性があるとされています。 そこで私は20年前の1995年~1998年の3年間、当院の妊婦全症例(4,200症例)についてHbA1cを調べたところ、HbA1c6.5%以上の妊婦は殆ど皆無でした。

21998年以降は、妊婦健診中に尿糖が(+)~(3+)に数回なった場合、75g経口糖負荷試験(OGGT)を施行したところ糖尿病型の妊婦は殆ど皆無であった(Ⅰ型糖尿病妊婦は除く)。無論、空腹時血糖126mg/dlも殆ど皆無である。殆どと云うのは、妊娠前にすでにⅡ型糖尿病になっていた妊婦さんがいたからである。これについては、下表に示す2009年の11月7日から2014年11月18日までの5年間の当院の妊婦約7,000例の内、数回尿糖(+)~(3+)で75g経口負荷試験を施行した176症例のうちの糖尿病型と妊娠糖尿の10症例の一覧表を見れば明らかです。つまり、妊娠前にすでに糖尿病型になった人はいずれもHbA1cが6.5%以上で、一方妊娠糖尿病型(GDM)の診断基準で(GDM)と判定された妊婦さんはいずれもHbA1cは6.5%以下であった。

糖尿病型診断基準

1空腹時血糖が126mg/dl以上

2随時血糖が200mg/dl以上

375g経口糖負荷試験の2時間値が200mg/dl以上

4HbA1cが6.5%以上

1、2、3、4のいずれかが一つでもあったら糖尿病型として診断

妊娠糖尿病(GDM)診断基準

1空腹時血糖が92mg/dl以上

275g経口負荷試験の1時間値が180mg/dl以上

375g経口糖負荷試験の2時間値が153mg/dl以上

1、2、3が一つでもあったら、妊娠糖尿病として診断する。

2009/11/07〜2014/11/18までの75g経口糖負荷試験(176症例)でⅡ型糖尿病型4症例とGDM型6症例

受付日空腹時血糖60分後血糖120分後血糖HbA1c
2009/11/07 80 164 150  
2009/12/22 124 275 304 6.8%
2010/11/25 93 137 105 5.2%
2011/07/04 153 327 261 7.9%
2011/11/30 95 239 165 6.0%
2012/03/09 93 189 151 5.7%
2012/06/16 98 177 141 5.6%
2013/06/13 98 139 140 5.7%
2013/10/24 123 278 275 6.9%
2014/07/31 130 305 234 8.7%
2014/08/20 93 185 187 5.5%
2014/11/18 84 146 140  

3近年では妊婦健診助成券が発行され、全例に随時血糖とHbA1cが調べられます。随時血糖200mg/dl、HbA1c6.5%以上はほとんど皆無である。日本全国では年間100万人の出産数が有り、妊婦のHbA1cの膨大な症例数になるので、是非追試をやってみれば納得できるはずです。私は母子手帳の検査した年月日の余白に赤ペンでHbA1cの数値を記録してあげています。

以上(1)(2)(3)から言えること

1そもそも妊婦さんはいずれも50歳以下である、老齢には至っていないので糖尿病型診断基準(早期発見の為のもの)の域に至っていないのである。従って、Ⅱ型糖尿病は生活習慣病、肥満、老化等が成因である。

2糖尿病性神経症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症に至るまでには約10年~20年の糖尿病(慢性高血糖状態持続)歴の過程がある

3そもそも糖尿病型の診断基準は、糖尿病の潜在症例の早期発見のためであること。

4HbA1cが7%(おそらく8%)以下でも重度の糖尿病性網膜症が発生する危険が少ない。

(糖尿病41巻補2A65頁・1998年)

以上より、妊婦には尿糖(+)がしばしば見られるが、75g経口糖負荷試験(OGGT)では、Ⅱ型糖尿病型の域には達せず、慢性高血糖状態は持続せず、糖尿病による糖代謝異常特有の合併症は見られない。つまり妊婦健診中に見られる尿糖(+)は、胎児を生育成長させる妊婦の体重増加に伴う過程の腎性糖尿(血糖値が正常の範囲内でも、尿に糖が出てしまうケース)で、腎性糖尿は疾患ではなく、放置しても何ら問題ない為、治療の必要のない尿糖(+)である。

なぜ、産婦人科医および糖尿病内科専門医に妊娠糖尿病(GDM)の概念が変わらなかったというと、産婦人科医が長い間、妊娠糖尿病(GDM)の成書に疑問を抱かず、踏襲していたからである。つまり糖尿病内科専門医の教えで妊娠糖尿病(GDM)があると妄信して疑わなかったので、成書はいつまでたっても同じように書かれているのである。一部の糖尿病内科専門医はこのことにすでに気づいているはずである。

まとめ

糖尿病の病態は単純にⅠ型糖尿病、Ⅱ型糖尿病に分類し、「妊娠糖尿」は糖尿病の病態と合致しないので糖尿病とは言えない。「妊娠糖尿」は腎性糖尿であり疾患ではない。

従来、妊娠糖尿病(GDM)と言われたものは、胎児を生育成長させる妊婦の体重増加に伴う過程の腎性糖尿(血糖値が正常の範囲内でも、尿に糖が出てしまうケースで、腎性糖尿は疾患ではなく、放置しても何ら問題ない為、治療の必要のない糖尿)であるので恐れるに足らないのである。慢性の高血糖状態の持続が確認されないので、糖尿病型診断基準に至らないし、糖尿病の病態にならないのであり、糖尿病の分類に入れないほうが糖尿病の病態を理解するのに明解である。

妊婦初期高血糖と形態異常児の関係についても、妊娠前から適切な血糖コントロールを図ることにより妊娠初期血糖値が正常化していれば、形態異常児率は非糖尿病群と同じ0.8%だが、妊娠後に糖尿病管理を始めた群(おそらく妊娠前にすでにⅡ型糖尿病になっていて見逃されていた高度肥満妊婦)では、7.5%であったとの報告があり、糖尿病女性では形態異常児防止の観点からHbA1c7.4%未満到達また、妊婦初期高血糖と形態異常児の関係についても、妊娠前から適切な血糖コントロールを図ることにより妊娠初期血糖値が正常化していれば、形態異常児率は非糖尿病群と同じ0.8%だが、妊娠後に糖尿病管理を始めた群(おそらく妊娠前にすでにⅡ型糖尿病になっていて見逃されていた高度肥満妊婦)では、7.5%であったとの報告があり、糖尿病女性では形態異常児防止の観点からHbA1c7.4%未満到達後の計画妊娠が進められるという説にも合致する。 

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